31.vascular disease and skin ulcer:血管病変と皮膚潰瘍 皮膚潰瘍:皮膚のキズ 皮膚潰瘍とは、皮膚=表皮・真皮の欠損をいう。表皮のみの欠損は「びらん」といいます。 皮膚潰瘍は、潰瘍の原因が、潰瘍局所にあるものと、潰瘍以外の原因があって、二次的に潰瘍が生じるものの2つに大別できます。 潰瘍局所に原因のある場合としては、一番多いのは外傷や熱傷です。しかしこれらは、保存的治療(局所洗浄と処置・二次感染の予防など)か、植皮や皮弁などの手術治療で治癒または軽快します。 イトーひと言:このような直接的な原因によるものは、うまく治療することで改善しますが、しかし皮膚科の教科書には、この一番多い皮膚疾患である潰瘍の記載がほとんどありません。片や、ほとんどない稀な皮膚疾患の説明が多く記載してあっ たりするのに。皮膚科は臨床診療科であるのに、この現実は困ったものです。 ところが、 「難治性潰瘍」と呼ぶ、なかなか治らない、または再発しやすい皮膚潰瘍では、多くの場合潰瘍の局所に原因がない、ことも多いのです。 その代表的な疾患には、循環障害、神経障害などがあります。 これらの多くは、下肢や足部に生じます。 難治性皮膚潰瘍の原因 1.動脈疾患(動脈 閉塞・動脈血栓症)・・・・・・動脈性潰瘍、虚血性潰瘍・・・通常足趾~足部にみられる 2.静脈疾患(下肢静脈瘤と深部静脈血栓後遺症)・静脈性潰瘍、うっ滞性潰瘍・・通常下腿の下1/3にみられる 3.神経障害(糖尿病性、脊髄損傷など)・・・・・神経性潰瘍・・・糖尿病性潰瘍は通常足趾~足部にみられ る 4.物理的障害(物理的圧迫による=褥瘡)・・・・仙骨部・大 転子部・踵部・背部・後頭部など。車椅 子使用者では坐骨部に 5.血管炎+微小血栓(膠原病など)・・・・・・・下腿にみられることが多い 6.慢性炎症(皮膚、皮下、骨など)・・・・・・・慢性骨髄炎上の皮膚、皮膚の慢性炎症など 7.皮膚腫瘍(皮膚悪性腫瘍など)・・・・・・・・有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫など よって、難治性皮膚潰瘍を診たら 潰瘍局所の処置も重要ですが、この皮膚潰瘍の原因は何か?動脈性皮膚潰瘍か?静脈性皮
膚潰瘍か?、それとも、その他の原因による皮膚潰瘍か?をまず考えなくてはなりません。 その診断には、患者さんが話してくれる病歴、症状の変化や既往歴・合併症に多くのヒントがあります。 難治性皮膚潰瘍の診断でまず大切なのは、問診です。 問診: いつからどの様な症状があるか?症状は進行しているか?経時的変化、1日のうちでの変化(朝か夕か) 疼痛、間歇性跛行、しびれ、冷感、チアノーゼの有無? 高血圧、不整脈、高脂血症、糖尿病の既往・合併の有無? 他部位に同症はないか?。家族に似た症状はないか?。 喫煙歴は?
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