33.diabetic skin ulcer:糖尿病性皮膚潰瘍(壊疽)

問診で糖尿病があり(または検査で血糖値が高い場合)、足に潰瘍があるときは、糖尿病性潰瘍を疑うが、これには2つある。
    治療が異なるので、必ず鑑別診断しなければならない。

1.狭義の糖尿病性壊疽・・・末梢神経障害による

2.糖尿病性末梢神経障害+糖尿病に合併した動脈閉塞による壊疽



※糖尿病に伴う動脈閉塞は、膝下の動脈閉塞が多い膝窩動脈は良く触知するが、足動脈(足背・後脛骨動脈)が触れない。

左が初診時、右が略治後
いわゆる糖尿病性水疱(擦過水疱):これは糖尿のコントロールと局所の 2次感染予防をうまくすれば治る






糖尿病に閉塞性動脈硬化症を伴った足部壊疽:初診(左)から約2週間で 潰瘍は進行(右)


動脈性潰瘍の治療(潰瘍の原因疾患の治療)

   糖尿病がある場合は、まず血糖コントロールを行う。

動脈閉塞部位が膝窩動脈より中枢の場合は、放射線透視下血管拡張術+ステント挿入術を行い、まず末梢循環を改善する。特に腸骨動脈領域の動脈閉塞に対しては、治療効果が大きい。
血管外科でのバイパス手術は減少傾向。

皮膚潰瘍に対しては局所処置(潰瘍に対する外用剤や2次感染の防止)を行うが、循環状態が改善すれば、皮膚潰瘍は治ってくる。・・・この場合潰瘍の局所 処置はあまり重要ではない。

動脈閉塞部位が膝窩動脈より末梢のときは、血管外科で行っている末梢動脈バイパス手術(distal bypass)。大伏在静脈を用いる。
膝窩動脈より末梢部への動脈狭窄に対して、血管内治療(血管拡張術)が行われることはあるが、短期間(3か月程度)で閉塞することが多い。しかし、再閉塞する前に足潰瘍の治療を行うと、治癒すれば、再閉塞しても、潰瘍の再発は少なくなる。
麻酔科ペインクリニックで行われている「交感神経ブロック」や薬剤による血管拡張療法。
血管新生療法としての「骨髄幹細胞移植」「遺伝子治療」も一部の施設では行われている。


皮膚潰瘍の局所治療
 最も大切なことは、潰瘍に細菌感染を伴っているか、いないかである。
 細菌感染を伴っているときは、局所洗浄と消毒を行う。抗生物質の全身投与を行うこともある。
 潰瘍部に壊死物質が付着しているときは、デブリドマン(壊死組織除去)を行う。
 デブリドマンには、メスやハサミを用いて行う「物理的または外科的デブリドマン」と蛋白溶解酵素などを用いて行う「化学的デブリドマン」がある。
 デブリドマンを行って、壊死物質が除去できたら、潰瘍に対する外用剤を用いる。

 

  足部壊疽(潰瘍)の鑑別


末梢神経障害
(狭義の糖尿病性壊疽)
末梢循環障害
(閉塞性動脈硬化症)
糖尿病罹病期間 長期が多い 一定しない
糖尿病コントロール  不良 関係なし
前駆症状 外傷・熱傷・水疱 冷感・間欠性跛行
自覚症状 無痛性 有痛性
皮膚温 暖かい 冷たい
末梢動脈拍動 良好 減弱・消失
潰瘍所見 乾燥・角化・湿潤(感染)  境界鮮明・深い
発生部位 足趾・足背など多発 足趾尖端
予後治癒 良好、再発性 難治性
治療 保存的治療 血行再建・切断

動脈性潰瘍は、どんな原因でも(ASO潰瘍でも動脈血栓性潰瘍でも)、足関節部より末梢に多い。



最も詳しい情報
「日本皮膚科学会の糖尿病性潰瘍・壊疽ガイドライン」
を読んでみよう!



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