平成27年度3年生伊藤孝明講義の要点

このページは大きいです。更新することがあるのでリロードを。

今年の講義では、診療ガイドラインの改定に伴って、昨年までとは違う内容を含んでいます。
とくに変わっている部分は、赤文字で記載します。赤文字だから試験に出す、というのではありませんのでご注意を。
重要事項は緑文字です。

最終講義で配布したプリントより・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

良性腫瘍
 有棘細胞癌(SCC)や悪性黒色腫(MM)など悪性腫瘍との鑑別が必要になる良性腫瘍の診断は、 大事。
  ・・・例えば、脂漏性角化症とSCC、母斑細胞母斑(NCN)とMMなど。


 特徴的な症状があり、それが内臓悪性腫瘍の合併が多い腫瘍、となると、大事。

 人の名前の付いている症候群(徴候)は、大事。  ・・・レーザー・トレラ徴候

 自然消退する腫瘍も大事。
  しかし、ケラトアカントーマは、自然消退もあるが、最新の治療ガイドラインでは「できる限り早 急に摘出する」と、変更されている。ケラトアカントーマの臨床所見や組織所見も 大事

 痛みのある腫瘍は、覚えておく。
  感染性粉瘤、ケロイド(側圧痛)、血管脂肪腫、グロムス腫瘍(飛び上がるほどの痛み)など


 手術によりさらに拡大する腫瘍(ケロイド)と、似ているが手術で改善する肥厚性瘢痕。

皮膚悪性腫瘍・癌前駆症・表皮内癌
 
 日光角化症:紫外線、部位、臨床所見、組織所見、治療法・・・最近はイミキモド外用治療

 ボーエン病:多発例はヒ素と関連、内臓悪性腫瘍の合併、臨床所見、特徴的な組織所見はとても大事

 乳房外Paget病:発生部位、湿疹や白癬症・白斑との誤診のこと、臨床所見、組織所見は大事。
「乳房外Paget病」とは呼ぶが、皮膚癌としての手術と術後の長期経過観察が必要であること。


有棘細胞癌(SCC)
 鑑別すべき疾患(脂漏性角化症、ケラトアカントーマなど)は、大事。
 臨床所見や組織所見も、とても大事。


基底細胞癌(BCC)
 出来やすい部位、特徴、ダーモスコピー所見の特徴(樹枝状血管)、組織所見の特徴

悪性黒色腫(MM)
 良性である母斑細胞母斑(NCN)との鑑別のキーワードは、A・B・C・D・E
 手掌・足底でのダーモスコピーによるNCNとの鑑別は重要

 組織診断は、全摘生検が好ましいが、大きい場合は、「部分生検も選択肢の1つ」と 最新のガイドラインでは変更されている。
 治療は腫瘍の全摘と、所属リンパ節に転移が疑われ た場合は、センチネルリンパ節生検を行う
 「予防的リンパ節郭清は行うべきでは無い」、という流れになっている。
 可能であれば、手術治療が何より第一選択である(化学療法の効果に不明確な部分が 多いので)。
 化学療法は、「分子標的薬」など新しい薬剤が使われるようになってきているため、 従来の化学療法は今後使われない可能性もある。

皮膚潰瘍
 皮膚潰瘍の保存治療では、どこから表皮化して治癒していくのか?
 難治性皮膚潰瘍の原因は?

血管性病変による皮膚潰瘍
 動脈性潰瘍の原因は何?、どこに出来やすい?
 糖尿病性皮膚潰瘍と末梢動脈性皮膚潰瘍のちがいは?
 静脈性下腿潰瘍の原因は、1次性下肢静脈瘤と深部静脈血栓症後遺症であること。
 これらの潰瘍は内果や外果に出来やすいこと。最も大切な治療法は「圧迫療法」であ ること。
 伏在型下肢静脈瘤の治療法は、どういうものがあるか?
 深部静脈血栓症の診断治療の重要性

皮膚外科
 目立ちにくい縫合法である「真皮縫合」とは?
 植皮の種類、全層植皮とは?分層植皮とは、それぞれの長所短所、メッシュ植皮とは?
 タイオーバー固定とはどんなものか
 植皮を失敗する原因は何か?

気分を変えて、試験問題について
過去の試験問題は

平成26年度3年生試験問題   試験問題の写真
そ れ以前の問題は、
http://itotak.m78.com/kougi26.html
のリンクを見て下さい。
試験問題の作成方法は、今年は大幅に変えます。短時間で解答できるような工夫をします。
まぁ、講義中に「重要だ」と言ったところ、このページの緑文字と 一部の赤文字です。



ちょっと、休憩!!
過去の試験問題の解答で、結構おかしいのがありました。
センチネルリンパ節生検を「センチメンタルリンパ節生検」
フォンテン分類4度を「フォンテーヌ分類4度」
答え合わせをしていると、つい笑ってしまうことがあります。




講義出席カードその他で受け付けた質問とその返事
毎年と同じで、今年も出席カード他に、色々書いてもらいました。

講義内容での質問と意見(順不同)

「・・・」のあとが、私の返答です。

9/15(火)1限のカード

○質問

今日もらったプリントのケラトアカントーマの組織図で盛り上がって増殖しているものは主に何でしょうか?特に赤く膿染してい る部分
・・・痂皮で覆われた角栓です。

手術の時に麻酔を最初から多めに使ってはだめなのか?リスクのコントロールの問題?
・・・薬は何でも効果がある最少量を用いるのが良い。これは局所麻酔でも同じです。リスクのコントロールという話になるのな ら、これは、局麻酔薬のショックが一番大切(しかしほとんどない)。実際の局所麻酔での手術での注意点は、腫瘍が大きい場合 や局所麻酔を行う範囲が大きな場合は、リドカインの極量にならないように、注意しなければならない、という点か。

口内炎と16.12粘膜粘液嚢腫のすぐみた時の差はなんでしょうか
・・・視診診断の前に、まずは自覚症状が大切で、多くの場合、口内炎は痛い、醤油などがしみる、ということがある。粘液嚢腫 ではふくれているだけで、自覚症状はほとんどない、痛くない、しみない。診察所見では多くの口内炎は白い白苔をを付けている か、紅くなっている。粘液嚢腫では盛り上がって透白色に見えることが多い。

P.2 6項目の2行目は有棘細胞腫ですか?
・・・ケラトアカントーマのことです。書いてあるとおりで今のところ良性腫瘍に分類されているが、私は、昔から「自然治癒傾 向のある有棘細胞癌の1型」だと?と思っている。

ヒ素はなぜ原因なのか
・・・これは、ボーエン病の事の様ですが、ヒ素角化症が生じてこれが悪性化するのです。ボーエン病が単発の時は、紫外線やウ イルス感染症、その他外的刺激などが原因のようですが、多発するボーエン病では、たとえば地下水にヒ素が混入している場合な どがあり、この場合は多発性のボーエン病になります。

手術にかかる時間(大きさにもよると思いますが・・)
・・・大きいと時間がかかる、小さいと早く終わる。30年も手術治療をしていると、1~2センチの粉瘤や良性腫瘍の摘出は、 局所麻酔を打って、約5分待って、メスを入れてから摘出までが5~10分、止血や摘出部の確認に2~3分。皮下の縫合、真皮 縫合、表皮縫合を行うのに5~10分です。
 大きな腫瘍を摘出して植皮する場合は、1時間以上かかることはあります。悪性腫瘍の手術では、手術の準備、摘出部の局所麻 酔、植皮の時は採皮部の局所麻酔、センチネルリンパ節生検をするときはさらに時間がかかります。加えてリンパ節郭清が加わる と(この場合は、腰椎麻酔か全身麻酔が必要)、長いと4時間くらい、かつて行っていた(今はしていない)手術用顕微鏡を用い た微小血管吻合を必要とする遊離皮弁では、6時間以上かかることがありました。
 ただ、手術時間は、術者の経験で大きく違って、今の私が15分で終わる手術でも、30年前の私は1時間近くかかっていたこ ともありました。

個人的ですがいぼ(1㎝は液体窒素でとっても特に再発などの問題はないでしょうか
・・・やり方次第。確実にやれば再発はほとんどないが、痛い。余り痛くなかった液体窒素処置であったら、焼きが甘いので、再 発の可能性はあります。

皮膚科でも美容整形のようなことは行いますか?(例えばニキビの瘢痕治療など)
・・・一部行っている施設もあります。当科では美容系はほとんどしません。ただ、ふつうの手術を美容外科的に綺麗にすること には心がけたりします(私はかつて随分長く美容外科学会の会員だった)。

脂漏性角化症はレーザー・トレラ症候群以外ではどういうケースで手術適応となるのですか
・・・患者さんの摘出希望があるとき。有棘細胞癌(SCC)や悪性黒色腫(MM)との鑑別診断が必要なときなどです。

ケラトアカントーマの組織像の特徴が知りたいです
・・・講義プリントの通りですが、部分的に見ると有棘細胞癌(SCC)と区別でいないこともあります(SCCの組織の項参 照)、特徴的なのは、SCC同様の組織所見ながら、腫瘍の全体像を見ると鑑別診断できます。

肥厚性瘢痕や汗管腫、稗粒腫など美容的に問題があっても体に害はなさそうですが、保険適用ですか?
・・・瘢痕拘縮のある場合は保険適応。汗管腫、稗粒腫は保険適応だったと思いますが、また調べます。

稗粒腫(と思っています)や母斑が前々から気になっています
・・・どういうふうに気になっているのか、文章からはよく判りません。

○試験問題

テストはマルチョイがいいです
・・・マルチョイ問題は、出しません。

基本問題がいいです
・・・毎年同じで基本問題です。

ケロイドに関する問は出して欲しいです
・・・検討中。出してもほんのちょっと、かな。

テストをわかりやすい問題にしてほしいです。大事と言ったところのみを出すようにして下さい。お願いします
・・・基本的にはそういう方針です。

日光角化症の組織図を出してほしいです
・・・検討しますが・・・

記述方式のテストは嫌です
・・・基本的に、カッコへの記述と、臨床写真、組織所見写真を選択する方法です。

図を使ったテストを出してほしいです
・・・臨床写真と組織所見の写真が一杯でます。

悪性腫瘍との鑑別が必要な良性疾患を問う問題がいいです
・・・そうですね、この辺はとても重要です。

Q.痛みのない腫瘍はどれか   A.①  
①毛細血管拡張性肉芽腫 ②脂肪腫 ③グロムス腫瘍 ④ケロイド   みたいな問題がいいです
・・・これって、凄く難問なので、どううしましょう??①も痛いという人はいるし、②には圧痛のある血管脂肪腫もあるし。


9/15(火)2限のカード

○質問

ホクロもそうですが、しみや母斑との鑑別が難しそうで、素人には全く分からないので、7㎜以上あれば皮膚科に診断行くのをオ ススメされますか?
・・・その通り。

口唇の癌や皮膚の病気もありますか?
・・・癌・腫瘍の範囲だと、昔は口唇の有棘細胞癌(パイプたばこによる刺激)、口唇の
紅斑性狼瘡: (lupus erythemato'sus、LE)からの有棘細胞癌、口唇粘液嚢腫、静脈湖、悪性黒色腫も時にあります。
 
足の裏に良性のほくろが出来る事はあるのですか?
・・・よくあります。

愚問ですが、日焼けサロン等の紫外線も発ガンリスクはあるのでしょうか。もしそうなら基底細胞癌でも全身性に現れるのでしょ うか
・・・あります。私自身は、日焼けサロンの紫外線による基底細胞癌と疑った人は経験していませんが、
http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2012/002163.php

メラノーマの治療において”予防的リンパ節郭清はしない”というのがよくわからないです。すみません
・・・画像検査、PET-CTやセンチネルリンパ節生検などで、リンパ節への転移が確認されていない場合は、リンパ節郭清を しない、と言うことです。

自分の体にも気になるホクロなどがあるのですが、みていただくことはできますか?
・・・兵庫医大病院は、特定機能病院なので、国の方針では、近くの皮膚科開業医で診てもらって、必要があれば紹介状を書いて もらって、予約して受診する。というのが基本です。ただ、本学学生の場合は、学校医か1号館付属棟1階の地域医療室に相談す るか、または私宛に直接メールするか、など。

ダー モスコピーの所見とてもおもしろいです。すごいです。VY皮弁もすごいです

○試験問題について

赤字のところで特にポイントとおっしゃっていたところから出して頂きたいです
国家試験に出ると予想される部分を中心に出題していただきたい
基底細胞癌の診断を出して頂きたいです
BCCのダーモスコピー所見は出して頂きたいです!!
基底細胞癌について問を出して下さい

病理図はあんまり・・・

授業中強調して下さった所をメインに出題して下さるようリクエスト致します

乳房外Parget病→誤診、病理
SCC→遠隔転移する、エピネフリンはなぜいれるか
BCC→蝋様光沢、ダーモスコピー
メラノーマ→ダーモスコピー


問.以下にダーモスコピー所見と病理所見を示す。治療方針として適切なものをa〜eから1つ選べ
・・・学生が書いた絵があり・・・
a.ステロイドの局注(トラニラスト内服) b.ベセルナクリーム外用(イミキモド) c.放射線療法と外用化学療法(ブレ オマイシン等) 
d.手術 e.経過観察が良い


10月13(火)のカード

○質問

皮膚の腫瘍・癌が浸潤、転移し皮膚以外も侵した場合、具体的にどの臓器どの程度なら皮膚科が対応しますか。
・・・皮膚から直接浸潤した場合の筋肉、腱、部位によっては骨。所属リンパ節転移、骨盤内リンパ節転移の場合。遠隔転移につ いてはそれぞれの科に紹介します。

悪性黒色腫の治療の際に注意を要する基礎疾患はありますか?
・・・質問が「治療の際」となっているので、高血圧、心疾患、肝・腎機能障害、糖尿病などの基礎疾患、超高齢者や全身状態が 良くない場合などです。


タイオーバー固定についてもっと詳しく知りたいです。
・・・リンクします。
http://itotak.m78.com/hifugeka2.html   このページの12のところ。

私のページのビデオ(パソコンやスマホの機種によってはビデオは動かない場合がある) 
 カミソリで採皮・・・http://itotak.m78.com/lgraft1.mp4

 腫瘍摘出・・・http://itotak.m78.com/lgraft2.mp4

 摘出部に採皮片を固定・・・http://itotak.m78.com/lgraft3.mp4

 タイオーバー・・・http://itotak.m78.com/lgraft4.mp4

 小孔を開け洗浄・・・http://itotak.m78.com/lgraft5.mp4

 タイオーバーの固定・・・http://itotak.m78.com/lgraft6.mp4

 ガーゼと圧迫テープで固定して終了・・・http://itotak.m78.com/lgraft7.mp4

 

動脈性潰瘍は閉塞性動脈硬化と末梢動脈血栓の2つの原因に分けることができますか?
・・・主な原因がこれらであって、その他の原因もあり、また、これらの合併もあります。スパッと分けることは出来ません。



学生による授業評価用紙(10月13日)

◎質問

タイオーバー固定をもう少し詳しく教えて下さい。
・・・前述です。ビデオがわかりやすいかもしれない。

真皮縫合で平坦になる理由
・・・真皮縫合は、縫ったときは縫合部を盛り上げますが、皮膚科の場合は、腫瘍などを摘出して、皮膚欠損がありますから、キ ズが開こうとする力がかかります。そのためその力がかかると予想される分だけ盛り上げます。約3ヶ月で縫合部は落ち着きます から、それ以上経過すると平坦になります。

下肢静脈瘤の治療について、血管内焼灼術がありましたが、レーザーには副作用(合併症)があるようなので、これからはラジ オ波のみが使われる時代になるということでしょうか?治療名称からもレーザーが消える可能性があるということですか?宜しく お願いします。
・・・いいえ、レーザー焼灼装置も改良され、副作用(合併症)の少ないレーザーが開発されて、今では保険適応になっていま す。治療する施設の好み?や術者の経験でレーザーもラジオ波もともに使われますし、また、ストリッピング手術でないと対応出 来ないこともあります。古い機種によるレーザー治療は減っていきますが、今後新たなレーザー焼灼装置が開発されるでしょう し、ラジオ波も新しい製品が出てくると思います。

MMと基底細胞癌の肉眼的な見た目の差がわかりません。
・・・視診のみでは、なかなか判らない場合もあります。
ネットで、「写 真 悪性黒色腫」や 「写 真 基底細胞癌」
で検索すると、写真が出てきますから、視診のトレーニングになる場合があります。

整形外科など傷が大きい手術が多い科でも真皮縫合を行うと患者さんにはよいと思うのですが・・・なぜ行われないのでしょう か。デメリットがあるのですか。
・・・整形外科・外科の一部などでは、既に真皮縫合を行っているところもあります。デメリットは、綺麗にするには縫合手技の 練習が必要、時間がかかる、などです。


◎コメント

わかりやすい授業ありがとうございました。教科書作り頑張って下さい。プリントよりシラバスにした方がいいと思います。

写真は怖かったです。ですが、もっと知識がもらえ るこの授業をうけたいと思いました。時間が短いのが悔しく感じました。

集中して授業をうけることができました。

 
説明該当箇所がわかりやすく授業に集中できました。HP.での質問対応など非常に教育熱心な印象を抱きました。

お体大丈夫ですか?無理しないでください。

すばらしかったです。

ありがとうございました。

診療や学会で大変だと思われますが、先生のお体も是非大事にして頂きたく思います。

久々に授業中に居眠りをしない授業を受けました。ありがとうございました。

出席とる、とらないに関わらず、授業でて講義を聞きたいなという内容をありがとうございました。テスト直前でなければ学会も 聞きにいきたかったです。

母も糖尿病なのでまた相談に伺うかもしれません。

3名の学生さんから・・
お体大事になさってください、お気をつけください とコメントあり


・・・学会準備と病気が重なって、今年は、喋りのス ピードが早かったり遅かったりで、聞きにくかったかもしれません。
過去のページ
http://itotak.m78.com/ryousei5.html

http://itotak.m78.com/akusei4.html

http://itotak.m78.com/kaiyou2.html
 
http://itotak.m78.com/hifugeka2.html
なども、参考にして下さい。

メールでの質問も受けます。
以上                        伊藤孝明