皮膚良性腫瘍
 兵庫医科大学3年生皮膚科講義
兵庫医科大学 皮膚科学 教室 伊藤孝明  
平成21年度より、さらに講義時間が少なくなりましたので、重要な部分のみ講義し ます。 18の良性腫瘍のうち8疾患のみにします。

このページは、時々更新しています。
講義内容のページは頻繁に 更新しま すので、再読込(リロード)して見てください。

項目
 1.脂漏性角化症・・・重要
 2.軟性線推腫
 3.粉瘤・・・重要
 4.皮下皮様嚢腫
 5.石灰化上皮腫
 6.ケラトアカントーマ・・・重要
 7.皮膚線維腫
 8.ケロイド
 9.肥厚性瘢痕
10. 脂肪腫
11.グロムス腫瘍
12.静脈湖
13.毛細血管拡張性肉芽腫
14.汗管腫
15.稗粒腫
16.口粘膜粘液嚢腫
17.指趾粘液嚢腫
18.肥満細胞腫(色素性蕁麻疹)


1.脂漏性角化症
 いわゆる「老人性のイボ」。中年以降に手掌足底以外の部位ではどこにでもできる。
 いろいろな大きさ形態がある。中年以降で誰でもできる。
 治療:摘出、液体窒素凍結療法。


 レーザー・トレラ症候群(徴候):短期間に脂漏性角化症の多発と皮膚 瘙(そう)痒症を伴う。
     内蔵悪性踵瘍の合併率が高い・・・ 国試に出る。

 重要なことは、臨床所見が様々で、皮膚癌・皮膚悪性腫瘍との鑑別診断が重要であること。
 たとえば、黒褐色で、色が不均一であれば、悪性黒色腫との鑑別診断
 角化が非常に亢進している場合は、有棘細胞癌との鑑別診断が必要。・・・ここまでは重要

 その他、盛り上がりのあるものは、エックリン汗孔腫(良性腫瘍)とも似ている。


 右は脂漏性角化症の組織標本。
 ありふれていて良性腫瘍なのに国家試験に出 ていた。
 臨床的にはちっとも重要じゃないのに。



2.軟性線推腫
 いわゆるアクロコルドンの多くはこれ(一部は脂漏性角化症)。頚や腋窩に多発する。中年以降でほぼ誰でもできる。
 多発するものは小さい(3mm以下)。単発性は大きくなるものもある(2cmまで)。

 治療:ハサミで切る。摘出。凍結療法。放置。
    



3.粉瘤
 5mm程度から5cmまで。ほぼ誰にでもできると思う(大小の差はある)。
 手掌足底にできるものほ外傷やイボ(尋常性疣贅)と関連してできることあり。

 治療:摘出。・・・内容物の圧出だけでは治らない。
 感染や炎症を伴つているときは、抗生剤投与や炎症を抑えるための切開排膿を行う。まれに自然吸収されることあり。
 感染や炎症を伴うと、圧痛や自発痛がある。

 外科医はこれを「脂肪のかたまり」と言うので、患者さんが混 乱して説 明に困る。「垢(アカ)のかたまり」の方が良い。

※右写真の左は、膝蓋部で外傷後の粉瘤、右は足底疣贅治療の後に生じた粉瘤

 
 粉瘤摘出術は、当科の皮膚良性腫瘍の中で最も手術例数の多い疾患の1つである。


 右は粉瘤の組織標本。皮下に表皮様構造を持った丸い嚢腫をみる。
 内部にはケラチン様物質が入っている。

 ありふれた良性腫瘍なので、最近はありふれた腫瘍が国家試験に出るという話もあるので、勉強!



4.皮下皮様嚢腫
 奇形腫のなかま。5mm程度から3cmまで。直上皮膚には変化なし。前額部や上眼瞼外側に好発。
  皮膚付属器を含む壁をもつ。腔内に毛髪をみる。

 治療:摘出。
            



5.石灰化上皮腫
 毛母踵ともいう。皮内に硬く触れる(皮下に小さい軽石が埋まっている様に触れる)。
 比較的若年女性に多い。5mm程度から5cmに及ぶことあり。上肢、顔面、頸部に好発。
 多発することもある。(教科書の記載にまちがいあり)

 治療:摘出。・・核出。
                



6.ケラトアカントーマ
 噴火口様の外観である。
 多くは1cm以下。まれに大変大きくなるものもある。
 皮膚良性腫瘍に分類されている。
 有練細胞癌との鑑別が難しい場合がある。部分生検では診断できないことがある。

 治療:摘出。自然退縮もあるが、増大が早い場合や2cm以上では経過観察せず摘出する。



7.皮膚線維腫
 5mmから2cm程度のやや球状に盛り上カてる正常皮膚色〜褐色の硬い小腫瘤。
 
 治療:摘出。
                 



8.ケロイド
 餅を引き延ばしたような、紅色〜褐色の腫瘍。
 原因は「いわゆるケロイド体質」と考えて良いが、本当は小外傷や手術痕が原因になる。
 
 キズの範囲を越えて腫瘍の様に拡大する。側圧痛がある。
 
 治療:難しい。ステロイド局所注射。トラニラストの内服。
 手術治療はダメ。(手術治療単独ではより大きなケロイドになる)
 手術後に、放射線照射を行うことで、再発は減るが、それでも再発することがある。




9.肥厚性瘢痕
 ケロイドに似る。キズの範囲を越えて広がらない。
 
 治療:摘出。ステロイド局所注射。トラニラストの内服。

  右の写真は熱傷後の肥厚性瘢痕


※いわゆるピアスケロイド

 治療は手術。

 組織所見ではケロイドだが、手術治療で必ず再発するのではない。
 (再発もあるが)

  右の写真は巨大なピアスケロイド


10.脂肪腫
 半球状に隆起する柔らかい腫瘍。1cm程度から小児頭大に及ぶこともある。まれに多発する。
 有茎性は極めてまれ。

 治療:摘出。
 血管に富む脂肪腫もあり「血管脂肪腫」といい、多発することがあり圧痛がある。
   ・・・痛い腫瘍ということで、試験に出ることがある。

 右は脂肪腫の組織標本


11.血管腫・・・血管腫は母斑の講義で説明する
(1)単純性皿管腫(赤あざ):生下時よりある。
  治療:レーザー照射

(2)苺状血管腫:生後1〜2週から3か月にできる。3〜6か 月で完成 する。
 治療:レーザー照射。ステロイド内服。
 「原則として自然消失を待つ」という教科書の記載は現在では間違い。
 これが国家試験に出たときは、他の選択肢 をみて、○に するか×にするかを決めなければならない。
 
 ※カサバッハ・メリット症候群:幼少児の巨大血管腫の腫瘍内出血により血小
 板が消費されDICを起こすことあり。治療:ステロイド内服。
(3)被角血管腫
※血管腫や動静脈奇形の分類は難しい。
 疾患概念の混同や意味不明の病名が付いてい たりする し・・・

 右の写真は、海綿状血管腫

11.グロームス腫瘍
 四肢末端とくに指、爪甲基部の下にできることが多い。5mm程度で爪の変形を伴うことが多い。
 さわると飛び上がる程の激痛のことが多い。
 治療:摘出・・・手術にはちょっとしたテクニックがいる。

  あまり重要な疾患ではないのに、国家試験 に出題されている。
                



12.静脈湖
 教科書的には老人性血管腫に分類されるが、内部に血栓を伴ったリンパ管腫である。
 高齢者の口唇に7mm程度の半球状の紅色〜黒褐色のやわらかい小結節。

 治療:摘出。放置してもよい。
       



13.毛細血管拡張性肉芽腫
 豌豆大までの半球状または有茎性鮮紅色から暗赤色の柔らかい小腫瘍。 口唇、指、顔面などに好発。易出血性。

 治療:摘出。




14.汗管腫
 1〜2mm大の扁平隆起性黄褐色小丘疹。思春期に下眼瞼や体幹に多発する。優性遺伝。
 治療:電気焼杓など。




15.稗粒腫
 帽針頭大から粟粒大の白〜黄白色の小丘疹の多発。多くは眼瞼部たが、前額、頬部、陰部にもできることあり。

 治療:針で小孔をあけ内容圧出など。




16.口粘膜粘液嚢腫
 下口唇などの2〜10mm大の柔らかい腫瘤。切開すると粘液が出る。
 粘液腺排泄管が破れ粘膜下にシアロムチンが貯留したもの。

 治療:摘出




17.指趾粘液嚢腫
 やや透明なドーム状に隆起した1cmまでの腫瘤。

 治療:摘出。再発の可能性あり。




18.肥満細胞腫(色素性蕁麻疹)
 皮膚を強くこすると線状に蕁麻疹を生じ、かつ皮疹部では特に隆起が著しい。:ダ リエサイン・・・重要

 治療:蕁麻疹に準じた治療。ステロイド投与。

 もの凄く、まれな疾患だが、なぜだか国家試 験に出題される。私は25年間で3人くらいしか診ていない




付1.母斑細胞母斑



付2.脂腺母斑(類器官母斑)










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皮膚良性腫瘍
下肢静脈瘤
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