下肢静脈の解剖と静脈灌流 下肢の主な静脈は、深部静脈系(右図灰色)と表在静脈(右図白色)から成る。 深部静脈系は、下腿静脈(前脛骨静脈・腓骨静脈・後脛骨静脈)〜膝窩静脈〜浅大腿静脈である。 表在静脈系は、大伏在静脈と小伏在静脈およびその枝である。 下肢の静脈血は、筋肉による圧迫と、多くの静脈弁の働きで心臓側に押し出される(筋ポンプ作用:俗に足は第二の心臓と言われることもある)。 正常肢では、下肢の静脈血のほとんどは、深部静脈系を介して心臓に還る。 表在静脈内にある静脈血は、交通枝を介して深部静脈に流れ込むか、大伏在静脈から大腿静脈へ、または小伏在静脈から膝窩静脈に流れ、心臓側に還ってい く。 正常(深部静脈が開存しているとき)肢では、表在静脈である大および小伏在静脈を、取り去っても、足の静脈灌流には障害はおこらない。 たとえば、狭心症で冠状動脈に狭窄があって「大動脈−冠動脈バイパス」を行う場合や末梢動脈閉塞に対するバイパス術では、伏在静脈を摘出して、これをバ イパス血管として利用するが、深部静脈が開存していれば、下肢静脈灌流に障害は生じない。 |
|
下肢静脈瘤の分類 1次性下肢静脈瘤 表在静脈である大または小伏在静脈そのものに原因のある もの。 1次性下肢静脈瘤の形(多くは1つの形だけでなく混在 している) 伏在型静脈瘤:伏在静脈が太くなっているか蛇行している 側枝型静脈瘤:伏在以外の静脈が 孤立性に太くなったり蛇行している 網目 状静脈瘤:2〜3mmの静脈が青く網目状にみえている クモの巣状静脈瘤:1mm以下の 細かい静脈がみえている 2次性下肢静脈瘤 1次性下肢静脈瘤の主な成因 |
下肢静脈瘤の治療の適応 現在の下肢静脈瘤治療 側枝型静脈瘤の治療 伏在型静脈瘤の治療 保存的治療:圧迫療法=弾性ストッキング・弾性包帯で |
|
下肢静脈瘤治療の不適応・禁忌 または保存的治療を選択すべき状態
手術に耐えられない高齢者や重篤
な全身合併症、シャントを有する心疾患患者など
静脈瘤が静脈還流路となっている
場合(2次性静脈瘤)や深部静脈血栓症やその既往のある人
硬化療法や手術治療の対象となるのは、1次性下肢静脈瘤であり、2次性下肢静脈瘤は治療選択が難しい。
2次性下肢静脈瘤でも、皮膚潰瘍があり、その潰瘍部位に静脈の逆流が及んでいる場合は、その逆流を阻止する目的での手術はよいと考える。
閉
塞性動脈硬化症などの下肢動脈閉塞性疾患
治療部位に化膿性・感染性病変の
ある場合
妊娠中など一過性
の静脈瘤の可能性のある場合