26.malignant melanoma:悪性黒色腫

メラノサイト系の腫瘍 転移しやすく,悪性度の高い腫瘍
 「ほくろのガン」と呼ばれているが、ホクロ=母斑細胞母斑から生じるのではない・・・らしい。ホクロから生じる場合も ある、とか、ホクロが癌化するのではなく、悪性黒色腫の初期がホクロと区別できない・・・らしい、とか。
 好発年齢は40~70歳代で他の癌より年齢が低い。まれに黒色でない場合がある。
 皮膚,粘膜,眼のほか稀に脳軟膜に生じる。極めて希に原発巣が消退することがある。

 日本人の皮膚では、足底に多く28%、顔面・頭頚部に14%、体幹に13%、下肢に12%。
 白人では紫外線との関連が多い様だが、日本人では体幹の発生が少なく、その結果足底 の頻度が高いということである。 足底では外傷などの刺激が原因と考えられている。
 かつては、右ききの大工さんの左親指に比較的よくみられた

 病型分類(Clark分類)①結節型 ②表在拡大型 ③悪性黒子型 ④末端黒子型


      


    



病期分類:腫瘍の厚さ(tumor thickness分類)、リンパ節や他の臓器の転移で分類する。

国立がん研究センターがん情報サービスのWebページから引用


予後:
病期0では、5年生存率は100%(表皮内MM)
病期Ⅰでは、  〃      は95~100%
病期Ⅱでは、  〃      約70~80%
病期Ⅲでは、  〃      約50~60%
病期Ⅳでは、  〃      約10%

       (最近治療成績が向上している)

診断で大事なこと:
  「病巣内生検をしない」方が良い。全切除生検が困難な場合のみ病巣内生検を適応とすべき。
  PET-CTで全身の転移の検索を行い治療計画する。

ダーモスコピー検査が有用

MM:メラノーマでは、皮丘平行パターン NCN:母斑細胞母斑では、皮溝平行パターン
 


MM(悪性黒色腫)と、NCN後天性母斑細胞母斑の鑑別点:ABCDE
 A: Asymmetry:非対称性
 B: Border  :境界が不規則
 C: Color  :色調が多彩
 D: Diameter : 直径が大きい(6mm以上)
 E: Enlargement or evolution of color change, shape, or symptoms :大きさの拡大、色や形、症状の変化



治療:手術療法(腫瘍摘出+センチネルリンパ節摘出生検して陽性ならリンパ節郭清してもよい?)+免疫療法(インター フェロン)? +下記新薬の投与?

  根治切除不能な場合は、摘出組織のBRAF変異の有無によって分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の使い分けが検討されている。

 術後や経過観察には、半年~1年毎にPET-CTで経過観察することが一般化している。

手術:腫瘍の厚さによって、辺縁からの摘出範囲を決める。
   
・表皮内に留まっている場合は、病巣から3~5mm離して脂肪層深層で摘出する。

・厚さが1mm未満では、病巣から1cm離して脂肪層深層または筋膜を含めて摘出する。
・厚さが0.76mm以上ではセンチネルリンパ節生検を行い、これが陽性ならリンパ節郭清を行うことがある?。
・厚さが1~2mmでは、病巣から1~2cm離して筋膜を含めて摘出し、センチネルリンパ節生検を行い、陽性であれば、 2期的に所属リンパ節郭清を行うことがある?。
・厚さが2~4mmでは、病巣から2cm離して筋膜を含めて摘出し所属リンパ節の郭清を行うか、転移が明らかでなければ センチネルリンパ節生検を行い、陽性であれば、2期的に所属リンパ節郭清を行うことがある?・・・・かもしれない。
・厚さが4mm以上では、病巣から2cm以上離して摘出。転移数・部位や全身状態を考慮し、遠隔転移巣が単発であれば摘 出や放射線治療を行うこともある(症状緩和のために)。
 ※逆に全身状態を考慮して、緩和医療のみを選択する場合もある。
 予防的リンパ節郭清は、推奨されない方向である。当科ではしないが、まだ行っている施設もある。


大 阪医療センターの悪性黒色腫の解説


国 立がん研究センターの悪性黒色腫の解説


山 崎直也先生の講演


 悪性黒色腫の診療指針については、最近数年で、めまぐるしく変化している。ネット情報には正しいものもあるが、3年前 の情報はもう全く古い。

 現在最も新しい信頼できる診療ガイドラインは、「日本皮膚科学会の皮 膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版」に掲載されている。今日も、また追加・変更があるかもしれない。

 根治切除不能な場合は、摘出組織のBRAF変異の有無によって分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の使い分けが検 討されている。
 BRAF遺伝子:細胞内の信号伝達と細胞の増殖に関与するb-rafという蛋白を作る遺伝子

低分子性分子標的薬(BRAF阻害薬)ベムラフェニブ:2014年12月承認。
同ダブラフェニブ、同 (MEK阻害薬)トラメチニブ;2016年3月承認。
免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)ニボルマブ;2014年7月承認。
同(抗CTLA-4抗体)イピリムマブ;2015年7月承認。

  ベムラフェニブ:ゼルボラフ錠(240mg)
  ダブラフェニブ:タンフィラーカプセル(50・75mg)
  トラメチニブ:メキニスト錠(0.5・2mg)
  ニボルマブ:オプチーボ点滴静注(20・100mg)
  イピリムマブ:ヤーボイ点滴静注(50mg)



 日本皮膚悪性腫瘍学会では、根 治切除不能な悪性黒色腫の薬物療法の手引きを発表している。これもまた、変更されていく様である。

 現在は、術後に投与する薬剤の指針も示されようとしている。


悪 性黒色腫のNCCNガイドラインの日本語版



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27.dermatofibrosarcoma protuberans:隆起性皮膚線維肉腫