伊藤孝明の
皮膚外科のお話

皮膚良性腫瘍の治療について
良性=悪性化しない、ので基本的に手術は、患者さんの希望による。
しかし、粉瘤は完全摘出しないと完治しないし、毛細血管拡張性肉芽腫では、出血が続くので手術が必要になる。
脂漏性角化症・ケラトアカントーマでは、悪性腫瘍との鑑別が必要になることがあるので、組織検査を兼ねて摘出手術をすることが多い。
良性なので、完全に取りさえすれば、腫瘍ぎりぎりで摘出してよい(悪性腫瘍では周囲正常組織も含めて摘出する)。後療法(化学療法・放射線治療など)は必 要としない。
ただし、真性ケロイドは、術後放射線療法を行わないと(しかし行っても)、再発する。

多くの場合、手術治療は、局所麻酔(キシロカインE=エピネフリン加リドカイン)にて行う。
手術に際しては、手術創のきずあとが最小となるように、手術を計画する。基本的に皮膚割線(皮膚のしわの方向)に合わせて縫合線を設定して摘出して、真皮 縫合を行って縫合部を盛り上げて縫い、表皮縫合を行う(真皮縫合を行うことが、外科での手術と異なり、これにより目立ちにくいキズにすることができる)。
良性腫瘍の摘出手術においては、皮膚科での手術と形成外科での手術は、基本的に同じである。大きな違いと言えば、皮膚科は生検なり手術での摘出組織を自科 で診断して、治療に反映させているが、形成外科は病理の専門医が診断してそれに従って治療している、と言う点である。現状では病理の専門医(守備範囲が全 身の組織)の皮膚組織診断より、皮膚科医の組織診断の方が、皮膚腫瘍に限って言えば、正しいことが多い。それは当然のこと。手術においては、形成外科が上 手いとか、美容外科が綺麗で皮膚科の手術はイマイチということは全くなく、術者の技量にかかっている。