伊藤孝明の
皮膚外科のお話

皮膚悪性腫瘍の治療
診断では、視診診断が重要。悪性黒色腫や基底細胞癌ではダーモスコピー検査が有用。
最終的には、組織診断で確定診断する。

悪性腫瘍では、手術治療が第一選択となることが多い。
 良性腫瘍では、腫瘍辺縁ぎりぎりで摘出しても完全摘出していれば良いが、悪性腫瘍では、表皮内癌・癌前駆症であっても、辺縁から 5mm〜3cm離して原発巣を摘出する。
とくに、悪性黒色腫や有棘細胞癌、Paget病では、原発巣は広範囲に摘出する。
同時に、局所リンパ節転移や遠隔転移の検索を行う。

局所リンパ節転移については、最近はセンチネルリンパ節(門番リンパ節)の転移を調べることが多い。
これは原発巣近傍に放射性同位元素や色素を注射して、一番最初に同定できるリンパ節を摘出し、その組織検査を行い、腫瘍細胞がなければ経過観察、腫瘍細胞 があればこの部のリンパ節郭清を行う方法である。当科では腫瘍近傍に造影剤を注射して、CTでセンチネルリンパ節を同定する方法を行っている。

日光角化症、Bowen病、基底細胞癌では、原発巣の摘出のみで、術後の経過をみることが多い(リンパ節転移・遠隔転移がほとんど無いため)。

乳房外Paget病、有棘細胞癌、悪性黒色腫などでは、原発巣摘出+リンパ節生検または郭清と化学療法を行う。有棘細胞癌では放射線療法も行う。
これら、遠隔転移の可能性のある腫瘍では、造影CT検査やMRI検査などを行う(悪性黒色腫では全身の転移検索のためにPET-CTを行う)。

頭部の血管肉腫は、皮膚に生じる悪性腫瘍の中では、最も悪性であり、どのような治療(手術的に広範囲摘出+放射線療法+化学療法)を行っても、広範囲摘出 部の辺縁への再発や肺転移により、他の皮膚悪性腫瘍とは比較にならず、予後はきわめて悪く、当科においても3年生存率はゼロである。