兵庫医科大学
皮膚科学教室
伊藤孝明のページ
このページは本学5年生実習のためのものです。患者さん向けの内容 ではありません。

【足潰瘍:虚血性=動脈性潰瘍の患者さん】
 問診が重要です。

【問診】
 いつから、どのように症状が出てきたか?今まで何科でどの様な治療を受けたか?その結果どうなったか?
 間歇性跛行はあるか?安静時疼痛はあるか?糖尿病・虚血性心疾患・脳梗塞・腎不全(透析)はないか?
 どうして、当科を受診したか?

【足潰瘍の診察】
 まず、足潰瘍の部位・形をしっかり診ます。動脈性潰瘍は、足趾に生じることが多い。踵に潰瘍があれば虚血性潰瘍か?褥瘡か?を診断しなくてはな りません。
 両足を視診・触診します。触診して潰瘍のある足が冷たくないか?
 足の脈を診ます。足背動脈と後脛骨動脈をちゃんと触れるか?膝窩動脈を触れるか?大腿動脈の脈を触れるか?
 潰瘍の痛みはどうか?(糖尿病があると潰瘍に痛みのないこともある:糖尿病と診断されていなくて足潰瘍で初診して高血糖であることが判明したこ ともある)
 潰瘍の周囲に発赤はないか?発赤があれば細菌感染を疑う。 
 潰瘍の細菌培養検査を行う。
 動脈性足潰瘍を疑えば、視診触診のあと、動脈のドプラ聴診を行う。

【動脈性足潰瘍の治療方針】
 動脈性足潰瘍では、潰瘍のあるその場所に原因があるのではありません。そのため局所治療を優先すべきではありません。
 視診・触診・ドプラ聴診・腹部の触診・聴診を行って、動脈狭窄部位を確認して、血行再建が必要と判断したら、すぐにこの治療が可能な診療科や施 設に紹介することが大切です。

【足潰瘍局所処置】
 細菌培養検査を行った後、壊死組織があればデブリドマンを行います。潰瘍の深さによって処置法を検討します。

【潰瘍の消毒について】
 最近とくに、「傷を消毒してはいけない、水で洗う。ガーゼを使ってはいけない」と言うような意見がありますが、日本皮膚科学会の創傷・熱傷ガイ ドラインでも明らかにしましたが、感染のない浅い傷は消毒の必要はありませんが、感染のある深い潰瘍には、消毒は必要です。ガーゼが有用な場合も 充分あります。
 ただ、動脈性潰瘍では、潰瘍の部分は虚血ですから、消毒を行って約2分待って、生食などで洗浄して正常組織を保護しなければなりません。