皮膚外科

私は「皮膚外科」を仕事としています、と言うことがあります。
 この言い方の裏には、私個人は○○が専門です、という言い方が嫌いだ、という意味を含んでいます。
 ちなみに、「皮膚外科」は標榜を許された診療科名ではありません。

 日本において「皮膚外科」という領域は、今から21年前に、今私が所属している兵庫医科大学皮膚科学教室と、お隣の神戸大学の皮膚科学教室の当時のメン バー数人が、「メスを持つ皮膚科医の必要性」を掲げて「皮膚外科勉強会」という会を立ち上げたことに始まります。そしてその後日本全国に同じ考えを持っ た、主に皮膚科医が集まり「日本皮膚外科学会」という学会を設立しました。

なぜその必要があったか?・・・と言うと

 皮膚科は、元々「皮膚泌尿器科」という領域から分かれて独立した「外科系診療科」です。・・・40年程前?のことでしょうか。

 ところが、現在本学においても、皮膚科学教室は内科系講座で、皮膚科は外科系診療科になっています。・・・おかしいでしょ。
他の医大では、内科系診療科に含んでいるところもあるかもしれません。

 皮膚科という領域では、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎(かぶれ)や水疱症(水ぶくれができる)、角化症(皮膚が硬くなる)などの外用治療や内科的治療を 行う分野と、「皮膚腫瘍=皮膚癌や皮膚の良性のできもの」の治療や「皮膚潰瘍(皮膚の深い傷)」を手術治療する外科系分野が混在しています。

 同じように、耳鼻咽喉科は薬で治療する内科的領域と手術を必要とする領域、眼科も点眼薬や内服薬による内科的領域と手術領域、整形外科も湿布や薬やリハ ビリテーションによる治療領域と手術的治療領域、産婦人科も同様という様に、もちろんあるわけですが、耳鼻咽喉科・眼科・整形外科・産婦人科など「皮膚科 以外の診療科は外科系診療科&外科系講座」であり続けている(当然)にもかかわらず、皮膚科だけが「内科系講座」になってしまっていて、多くの皮膚科医が 皮膚科医が治療すべき「皮膚癌・皮膚腫瘍」の手術すら放棄してしまったに近い状況になっています。

 この状況は、皮膚を専門とする皮膚科医が皮膚癌の治療ができない、という異常な事態を招くことであり、それではいけないと考えた皮膚科医が集ったのが私 たちの会で、それを中心にして、皮膚腫瘍や皮膚潰瘍の治療のレベルを上げていこうと日々努力し、トレーニングして最良最善の皮膚にまつわる手術治療を行お うとしているのです。

 なお現在日本には私の参加している「日本皮膚外科学会」と、もうひとつ「日本臨床皮膚外科学会」の2つの流れがあります。

          以上:文責・日本皮膚外科学会 理事 副会長 伊藤孝明