足の病気について
兵庫医科大学皮膚科学教室 伊藤孝明

はじめに
このページでは、足の病気について、まとめてみるつもりです。
主に、私が現在診療している「下肢静脈瘤」と「足潰瘍」についてです。

日本以外の一部の国では、「足病医」という足の病気についての専門家がいるようですが、日本にはそれがありません。
足には、さまざまな病気が生じますが、どの科で診療しているか?というと、不明です。
患者さんが、どの科で診療を受けるのが良いかが判らない、というのが現実かもしれません。
 
医療者もまた同じで、内科や外科の医師が、足の病気について、何科に紹介すればよいか、判らない、というのが現実でもあります。
もちろん、私もすべてを知っているわけではありません。

現在診療している「下肢静脈瘤」「糖尿病性潰瘍」「閉塞性動脈硬化症」などの足の病気の治療経験を「足がかり」に、足の病気について考えていくこと を、私 のライフワークのひとつにしようと考えているところです。


私の現在の治療内容
ふつうの足の静脈瘤(1次性下肢静脈瘤)の手術治療
 1次性下肢静脈瘤の手術治療(年間約100例、170肢に手術治療を行っている)
   術式:標準術式は伏在静脈高位結紮切離術+膝部大伏在静脈結紮切離術+不全交通枝結紮切離術
       高度な静脈瘤ではストリッピング手術(伏在静脈抜去)
       ※小静脈瘤に対する硬化療法は行っていない。
 ※平成18年12月14日に下肢静脈瘤硬化療法専用の硬化剤として 「ポリドカスクレロール(ゼリア新薬)」が発売されました。しかし伏在型静脈瘤には適応ではありません。伏在型静脈瘤に硬化剤のみの治療を行っても、 3〜6ヶ月で再発(再疎通)します。高位結紮後の伏在型静脈瘤の残存する静脈瘤に硬化療法を行うことは治療効果があります。

 2次性下肢静脈瘤(静脈瘤となっている部分に原因のない静脈瘤)
   通常2次性静脈瘤は手術対象にはならないが、深部静脈血栓後遺症による場合でも、新たに生じた潰瘍が表在静脈逆流によるものであれば、逆流を絶つ治 療によって潰瘍の治癒か改善が得られている。

深部静脈血栓後遺症に対する保存治療
 下肢の圧迫療法と運動療法の指導と抗凝固剤または抗血小板剤の内服を行っている。

下腿潰瘍の治療
 下腿潰瘍の原因のほとんどは上記の病気によるもので、これらを治療することで治癒または改善する。
 ただし、すべてを治療できるのではない。
 潰瘍局所の保存治療
 現在までに、日本で使用が認められているほぼすべての皮膚潰瘍治療外用剤での治療経験があるので、潰瘍の状態に合わせた治療薬を選択して治療を行って いる。
 平成16年に「難治性皮膚潰瘍に対する骨髄細胞移植併用植皮術」を、兵庫医科大学倫理委員会で承認され試行している。

動脈性皮膚潰瘍の治療
 動脈性つまり虚血性皮膚潰瘍の治療は、血行再建か動脈側副血行を増やす治療、切断、保存治療が主な方法である。
 前2者は当科では行っていない。膝までの動脈狭窄にたいしては循環器外科に紹介して血行再建(バイパス手術)を行ってもらう。
 膝下狭窄では、麻酔科での腰部交感神経ブロックを行ってもらう。
 神 戸 Podiatryミーティングの世話人施設に紹介し、それぞれが得意とする治療を相互に行っている。 

 足部の部分切断はなるべく当科で行うようにしている。
 膝下切断が必要な場合は、整形外科の協力を得て切断術を行っている。
 
 下腿部の動脈閉塞に対して、顕微鏡下微小血管吻合手技を用いた血行再建の治療を検討している。
 当科での微小血管吻合手術は15年前から行っている治療法 であり、今後は足虚血に対して応用する予定である。

ホームページに戻る