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ドプラ聴診器を用いた下肢深部静脈血栓症の即決診断法

    「いわゆるエコノミークラス症候群」の即決診断法

 1999年に記載したページhttp://itotak.m78.com/doppler.htmlの中に、「深部静脈閉塞例の大伏在静脈音」と題して公開していましたが、病院を受診しながら深部静脈血栓症の診 断がなされずに経過してしまっている複数の患者さんに出逢ってしまいましたので、ドプラ聴診器(ドップラー聴診器)で、下肢深部静脈血栓症(DVT)を簡 単に診断できる方法を改めて記載 することにしました。

 深部静脈血栓症は、肺塞栓症の原因として重要な疾患で、初期症状の下肢の腫脹・潮紅で医療機関を受診されることもありますが、その他の疾患と誤診され、 初期治療を行われずに慢性深部静脈血栓症となっていることが少なくありません。

 治療効果が期待される発症初期に、すぐに診断できる
「ドプラ聴診器を 用いた下肢深 部静脈血栓症の診断法」を考案しました。

 正常では、下肢の表在静脈である伏在静脈では、わずかな流れしかなく一般的なドプラ聴診器で上向流を聴くことが出来ません。
 しかし深部静脈血栓症が生じると、バイパスとして機能する 伏在静脈は足部からの静脈還流路となるため、その流量は著明に増加し、ドプラ聴診器で、充分確認することができます。
 よって、下肢腫脹・潮紅が見られた場合、伏在静脈(膝部大伏在静脈)にドプラ聴診器のプローブを置き、聴診し上向音を確認すればよいのです。

 この検査はわずか2〜3分で可能であり、これで上向流を確認したら、下肢〜骨盤の造影CTを緊急依頼し、深部静脈の閉塞と血栓の存在を確診して、すぐに 治療を開始することが出来ます。


ドプラ聴診のトレーニングについて
 前述のごとく、正常肢の大伏在静脈では、ドプラ聴診器で静脈音を聴くことが出来ません。
 写真のように、大伏在静脈の位置が確認出来る場合は容易ですが、そうでない場合、検者は被検者の膝窩静脈を圧迫すると、深部静脈を介しての静脈還流はほ とんど無くなるので、大伏在静脈を介しての流れとなり、通常のドプラ聴診器で、上向流を聴くことが出来るようになります。

 慢性期深部静脈血栓症または深部静脈血栓後遺症では、側副血行が発達し、この方法で伏在静脈の上向流を聴くことが出来ない場合はありますが、一度膝窩静 脈を圧迫し伏在静脈上向流に誘い水的に流れを作ると、その後短期間上向流が続きます。
 正常肢では、膝窩静脈の圧迫を解除すると、すぐに上向流は無くなるため、ドプラ聴診では何も聴くことができません。

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兵庫医科大学皮膚科学教室
伊藤孝明