3年生3学期皮膚科講義

皮膚良性腫瘍

伊藤 孝明         
1.脂漏性角化症
 いわゆる「老人性のイボ」。中年以降に手掌足底以外の部位ではどこにでもできる。
 いろいろな大きさ形態がある。誰でもできる。
 治療:摘出、液体窒素凍結療法。
 レーザー・トレラ症候群:短期間に脂漏性角化症の多発と皮膚瘙(そう)痒症を伴う。
     内蔵悪性踵瘍の合併率が高い・・・国試に出る。

2.軟性線推腫
 いわゆるアクロコルドンの多くはこれ(一部は脂漏性角化症)。頚や腋霜に多発する。ほぼ誰でもでさる。
 多発するものは小さい(3mm以下)。単発性は大きくなるものもある(2cmまで)。
 治療:ハサミで切る。摘出。放置。

3・粉瘤
 5mm程度から5cmまで。ほぼ誰にでもできると思う(大小の差はある)。
 手掌足底にできるものほ外傷やイボと関連してできることあり。
 治療:摘出。・・・内容物の圧出だけでは治らない。
 感染や炎症を伴つているときは、抗生剤投与や炎症を抑えるための切開排膿を行う。自然吸収されることあり。
 外科医はこれを「脂肪のかたまり」と言うので、患者さんが混乱して説明に困る。

4.皮下皮様嚢腫
 奇形腫のなかま。5mm程度から3cmまで。直上皮膚には変化なし。上眼瞼外側に好発。
  皮膚付属器を含む壁をもつ。腔内に毛髪をみる。
 治療:摘出。

5.石灰化上皮腫
 毛母踵ともいう。皮内に硬く触れる(皮下に小さい軽石が埋まっている様に触れる)。
 比較的若年女性に多い。5mm程度から5cmに及ぶことあり。上肢、顔面、頸部に好発。
 多発することも多い。(教科書の記載にまちがいあり)
 治療:摘出。・・核出。

6.ケラトアカントーマ
 皮膚良性腫瘍に分類されている。多くは1cm以下。有練細胞癌との鑑別が難しい。
 治療:摘出。自然退縮もある。大変大きくなるものもある。

7.皮膚線維腫
 5mmから2cm程度のやや球状に盛り上カてる正常皮膚色〜褐色の硬い小腫瘤。
 治療:摘出。

8.ケロイド
 餅を引き延ばしたような、紅色〜褐色の腫瘍。本当は小外傷や手術痕が原因になる。
 キズの範囲を越えて腫瘍の様に拡大する。側圧痛がある。
 治療:難しい。ステロイド局所注射。トラニラストの内服。手術治療はダメ。

9.肥厚性瘢痕
 ケロイドに似る。キズの範囲を越えて広がらない。
 治療:摘出。ステロイド局所注射。トラニラストの内服。

10.脂肪腫
 半球状に隆起する柔らかい腫瘍。1cm程度から小児頭大に及ぶこともある。
 有茎性は極めてまれ。治療:摘出。
 血管に富む脂肪腫もあり「血管脂肪腫」といい、多発することがあり圧痛がある。

11.血管腫
(1)単純性皿管腫(赤あざ):生下時よりある。
  治療:レーザー照射
(2)苺状血管腫:生後1〜2週から3か月にできる。3〜6か月で完成する。
 治療:レーザー照射。ステロイド内服。
 「原則として自然消失を待つ」という教科書の記載ぼまちがい。
 ※カサバッハ・メリット症候群:幼少児の巨大血管腫の腫瘍内出血により血小
 板が消費されDICを起こすことあり。治療:ステロイド内服。
(3)被角血管腫

12.グロームス腫瘍
 四肢末端とくに指、爪甲基部の下にできることが多い。5mm程度で爪の変形を伴うことが多い。
 さわると飛び上がる程の激痛のことが多い。
 治療:摘出

13.静脈湖
 教科書的には老人性血管腫に分類されるが、リンパ管腫であることも多い。
 高齢者の口唇に7mm程度の半球状の紅色〜黒褐色のやわらかい小結節。
 治療:摘出。放置してもよい。

14.毛細血管拡張性肉芽腫
 豌豆大までの半球状または有茎性鮮紅色から暗赤色の柔らかい小腫瘍。口唇、指、顔面などに好発。易出血性。
 治療:摘出。

15.汗管腫
 1〜2mm大の扁平隆起性黄褐色小丘疹。思春期に下眼瞼や体幹に多発する。優性遺伝。
 治療:電気焼杓

16.稗粒腫
 帽針頭大から粟粒大の白〜黄白色の小丘疹の多発。多くは眼瞼部たが、前額、頬部、陰部にもできることあり。
 治療:針で小孔をあけ内容圧出。

17.口粘膜粘液嚢腫
 下口唇などの2〜10mm大の柔らかい腫瘤。切開すると粘液が出る。粘液腺排泄管が破れ粘膜下にシアロムチンが貯留したもの。
 治療:摘出・・・??

18.指趾粘液嚢腫
 やや透明なドーム状に隆起した1cmまでの腫瘤。
 治療:摘出。再発の可能性あり。

19.肥満細胞腫(色素性蕁麻疹)
 皮膚を強くこすると線状に蕁麻疹を生じ、かつ皮疹部では特に隆起が著しい。:ダリエサイン
 治療:蕁麻疹に準じた治療。ステロイド投与。
 
 

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